企業型確定拠出年金の基本

2021年7月28日

現在は多くの企業で確定拠出年金の制度が用意されています。

しかし、制度を理解せず給与受取を選択するなど、お得なマッチング拠出や運用の機会を逃している方は多いのではないでしょうか。

そこで今回は、確定拠出年金について基本から解説していきます。

難しくて手を付けるのを諦めた方や、なんとなく制度を利用しているものの活用しきれていない方、今更聞けないという方にはおすすめの内容となっています。

是非、最後までご覧ください。

確定拠出年金とは

まず、一般的に日本のサラリーマンに用意されている年金・退職金制度について確認します。

よく年金は建物に例えられますが、その場合、一階に国民年金、二階に厚生年金と国の年金制度があり、三階には企業型確定拠出年金があるという形になります。

この確定拠出年金の制度は、国の年金制度とは異なり、会社が従業員のために用意しているものです。

ですので、中には確定給付年金という違う制度の用意がある場合や、確定拠出年金の制度が用意されていない企業もありますので、ご確認してみてください。

また、個人事業主などの個人で加入する個人型確定拠出年金制度も「iDeCo」という愛称で有名になっていますが、今回は企業型確定拠出年金をベースに解説をしていきます。

確定拠出年金において他の年金制度と大きく異なる点は、自身で運用方法を決めて将来に備える仕組みであるというところです。

運用するということで、「難しそうだ」と思われる方が多いかと思いますが、制度としては複雑なものではありません。

「掛金」「運用」「給付」の3つの観点で確定拠出年金の制度を簡単に解説していきます。

「掛金」とは、企業がお金を拠出したり、皆さまが毎月給与天引きで拠出したりして積み立てて運用していくお金の事です。

この積立は、60歳到達後の3月まで続きます。

それ以降は、「運用」によって溜まったお金を「給付金」という形で受け取っていきます。

この給付金は、掛金をそのまま取り崩していくのではなく、この制度を活用し、ご自身でどのような運用をしていくかで受け取り金額が変わります。

給付金には老齢給付金、死亡一時金、障害給付金の3種類があり、死亡一時金と障害給付金は万一の場合の給付金であり、給付の年齢制限がなく、給付の条件に該当する状態となった場合はその時から受け取ることが出来ます。

通常は、老齢給付金として、積み立て、運用してきた金額を受け取ることになります。

原則60歳から70歳までに受け取りを開始することになります。

受け取りは、分割払い、一括払い、一部を一括払いし、残りを分割払いとする3種類の方法から選択することができます。

掛金の積立が終わった後でも、給付金の受け取りが終わるまで、運用が続くこととなります。

また、この制度は一度加入をすると、途中でやめたり、一部引き出しをすることが出来ません。

通常の運用商品や貯蓄とは違い、将来に使う年金を準備する制度であることをご理解ください。

60歳より前に企業を退職、転職した場合等でも、途中で給付を受けることが出来ませんので、転職した先で用意されている確定拠出年金制度へ移動の手続きを行うか、確定拠出年金制度が用意されていない場合は個人型確定拠出年金へ移動する手続きが必要となります。

確定拠出年金の税制メリット

確定拠出年金の制度を利用すると、様々な場面で税制メリットを享受することが出来ます。

まず、確定拠出年金の掛金は給与の位置づけではないので、所得税や住民税の対象外となります。

本来、給与で受け取ったら課税される税金が、確定拠出年金制度を利用した分については非課税となるということです。

また、運用益も非課税となります。

給付金を受け取る際に、初めて課税の対象となりますが、所得控除や公的年金控除を受けることができますので、最終的にはこの制度を利用しない場合に比べ税金の負担が軽くなるとご理解ください。

特に、積極的に運用している場合には、運用益が非課税となるということはとても大きなメリットになります。

例えば、毎月10,000円を20年間積み立て、年4%の率で運用した場合、運用益が課税される口座と課税されない当制度での受け取り金額には約30万円の差が発生することになります。

運用期間や金額が多ければ多いほど、有利になります。

こうした税制優遇は直接目に見えるものでなくわかりにくいのですが、理解しておくことでよりお得な制度活用が可能になります。

マッチング拠出を活用しよう

事業主掛金と加入者掛金(マッチング拠出)

掛金には事業主掛金と加入者掛金の2種類があります。

事業主掛金とは、会社が従業員のために拠出する掛金です。

本来この掛金は給与とは別枠で拠出されますが、制度によっては、その一部を給与として受け取るように指定出来たり、確定拠出年金に加入せず、この掛金を給与に充てることを選択出来る場合もあります。

多くの場合、事業主掛金は退職金・勤続年数・年齢・評価結果等によって拠出額が決められます。

一方、加入者掛金とは、本来給与で受け取るお金を、ご自身で金額を指定して事業主掛金に上乗せする掛金のことを言います。

この上乗せ分の拠出のことを、「マッチング拠出」といいます。

このマッチング拠出は任意であり、限度内でご自身が決めた金額を給与天引きで拠出することが出来ます。

マッチング拠出の上限額を月額で説明しますと、事業主掛金の額または55,000円から事業主掛金の額を差し引いた額のどちらか低い方が上限となります。

つまり、事業主掛金額が月10,000円の場合、マッチング拠出額の上限は月10,000円です。

また、事業主掛金額が月30,000円の場合、マッチング拠出額の上限は月25,000円となります。

これは、法令による規定です。

また、個人型確定拠出年金と併用する場合は上限金額が変わりますのでご注意ください。

マッチング拠出の税制メリット

マッチング拠出をした場合、その全額が所得控除の対象となります。

そして、毎年控除されますので長年マッチング拠出を利用している場合、より大きなメリットを享受できます。

例えば、所得税・住民税の合計税率が20%の場合を想定し、毎月10,000円をマッチング拠出した場合としない場合で比較してみます。

まず、毎月の給与の内10,000円を今まで通り給与として受け取るのであれば年間で24,000円が税金として差し引かれ、残る金額は96,000円となります。

しかし、マッチング拠出した場合には税金が差し引かれることがありませんので、120,000円をそのまま残すことが出来ます。

つまり、年間24,000円得をするということになります。

マッチング拠出は任意ですので、利用するかはご自身で選択して決めることが出来ますが、このように簡単に税制メリットを享受することができますので、すぐに取り崩す必要のない貯金をするのであれば、マッチング拠出を利用することをおすすめします。

確定拠出年金で資産運用をしよう

確定拠出年金は単に貯蓄をするだけではなく、運用しながら将来の年金を積み立てることが出来るものとご理解いただけたかと思います。

また、確定拠出年金制度は運用益が非課税となる点に大きなメリットがありますので、単に定期預金として使用するのではなく、投資信託商品を選択して運用を行うことを強くおすすめします。

それでは、実際に運用を行う際、どのような商品を選べば良いのでしょうか。

次回以降、詳細については解説していく予定ですが、投資について知識が薄い方は、バランスファンドというものを選択することをおすすめします。

これは、国内、海外それぞれの債券、REIT、株式という確定拠出年金制度にて選択可能な商品の中から信託会社があらかじめバランスよく配分割合を指定して商品を選択してくれている、いわゆるセット商品です。

どの商品が良いか分からない場合には、ひとまずバランスファンドを選択し、運用について理解を深めた際には、他の商品をご自身で指定することをおすすめします。

まとめ

今回は企業型確定拠出年金の基礎について解説しました。

今回解説したポイントは以下の通りです。

・確定拠出年金は60歳まで引き出せない積み立てと運用を掛け合わせた年金制度

・確定拠出年金は税制メリットの大きい制度

・すぐに取り崩す必要のない貯金を行うよりは、確定拠出年金の活用を

・マッチング拠出も活用することでさらに税制メリットを享受出来る

・運用商品に迷ったらバランスファンドがおススメ

この機会に、ご自身の確定拠出年金制度活用を見直してみてください。

また、具体的な金額や制度説明につきましては現行の制度、一般的なものを中心に解説しております。

制度改定やご自身の勤め先で用意されている制度を確認ください。