個人向け国債の魅力とは?メリット・デメリットもあわせて解説

2021年7月28日

投資で利益を上げるためには「リスクをとる」ことが絶対条件ですが、過度なリスクは大きな損失を招く可能性が高く、場合によっては投資市場から一発退場の負け方につながるおそれがあります。

債券投資は「リスクヘッジの投資」で、なかでも「個人向け国債」は国が発行体であることから安全性の高い資産と言えます。みなさんのポートフォリオに個人向け国債を組み込むことは、確実に資産運用のリスクを低下させ、より安定した期待リターンをもたらしてくれるでしょう。金利も銀行の普通預金より高めに設定されているため、使用用途のない資金であれば、銀行よりも個人向け国債の方が利子を受け取れる可能性が高いです。

今回の記事では、個人向け国債の概要とメリット・デメリットについて解説しています。いくら安全資産といっても、正しい知識がない状態での運用は危険です。上手に個人向け国債を運用してリスクヘッジをするためにも、ぜひ本記事を参考にしていただきたいと思います。

国債の概要

「債券」は、資金を確保したい国や企業などが発行する借用証明書のことです。投資家はこの債券を購入することで、希望する発行体へ資金を提供することができます。債券にはさまざまな発行体が存在しますが、その中でも「国債」は日本や米国などの一国家が発行するタイプの債券になります。

平成15年までは、実物の紙で債券は発行されていましたが、法律の整備により現在ではペーパーレス化されています。取引自体も証券会社などの口座記録によって管理されています。

債券投資の最大の特徴は、「提供した資金の返済期日があらかじめ決められている」ことです。もちろん、今回テーマの国債も例外ではなく、「決められた期日に、利子をつけて」返却されるのです。株式投資の場合、投資家自身の判断で売却をすることがほとんどなので、この点が債券投資とは大きく異なるポイントになります。ちなみに、債券が満期を迎えて投資が終了することを「債券が償還された」と表現するので、覚えておきましょう。

債券投資全般の概要やメリット・デメリットについては、こちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はご参考ください。(→債券投資って何?今さら聞けない仕組みや種類を解説 リンク)

個人向け国債とは

国債にもさまざまな種類がありますが、そのなかでも「個人向け国債」は個人が購入できる債券です。言い換えれば、「一個人が国へ資金を貸す」ということになります。

国は、国債を発行することで確保した資金を、公共事業や各種政策に使用します。個人向け国債も他の債券投資と同様、定期的にクーポンをを受け取りながら、満期を迎えると利子と一緒に元本が返済されます。一国家が支払い元であることから、債券投資のなかでも信用性の高い投資に入ります。

また、個人向け国債には最低金利保証があり、金融機関の普通預金よりも高い利率が設定されています。使用用途のない資金を銀行に寝かせておくよりは、資産を増やすという意味では有効と言えるでしょう。万一、急に現金が必要になった場合でも、運用開始から1年が経過すれば国債の中途解約も可能になります。

個人向け国債の種類

個人向け国債には3種類のタイプがあります。それぞれのタイプで満期年数や金利が異なりますので、自分にあったタイプを選びましょう。

変動10年タイプ

満期までの期間が10年という、比較的長期の投資プランになります。「変動」というワードが入っている通り、金利は定期的に変動する特徴があり、基本的には半年ごとに適用利率が変化します。具体的な利率は実勢金利に応じて上下するため、適用利率によって利子の額面も増減する特徴があります。

変動10年タイプの最大のメリットは「金利上昇に強い」ことです。マイナス金利の影響で低金利が続く現状においても、長期の保有が可能と思われます。また、最低金利保証として年率0.05%以上の利率が確保されているため、メガバンクよりも資産を拡大しやすいでしょう。

固定5年タイプ

固定5年タイプは、固定金利が適用される個人向け国債です。すなわち、発行時の適用利率が5年間維持されるため、投資計画を立てやすいメリットがあります。償還されるまでの期間も5年と、長すぎず短すぎずの期間設定になっています。

固定3年タイプ

固定3年タイプの特徴は、固定5年タイプとほぼ変わりません。個人向け国債のなかでは、償還までの期間が3年と最短の投資期間になります。

個人向け国債のメリット

少額から国債を買える

個別債券投資の場合、どうしても投資資金がかさみがちなデメリットがありますが、個人向け国債は「1万円」からの購入が可能です。初めて債券投資にチャレンジする方でも少額から投資をスタートできるので、気軽に始めやすいメリットがあります。少額から債券投資をスタートして、少しずつ投資額を増やしていけるのでl、より安全な方法といえるでしょう。

預金よりも好金利

現在の日本ではマイナス金利政策の影響もあり、銀行に預金しても利息はわずかしかつきません。メガバンクの普通預金にいたっては「金利0.001%」しかなく、銀行にお金を預けるだけでは資産は増えないのです。

個人向け国債の利率も実勢金利に左右されますが、最低金利保証によって「金利0.05%」以上は確約されています。メガバンクの50倍以上の利率と考えれば、かなり大きい利率ではないでしょうか。

加えて、個人向け国債への投資は、銀行の「ペイオフ対策」にもなります。ペイオフは銀行の預金保険制度のことで、仮に銀行が破綻しても1金融機関につき1,000万円とその利息が保証される制度を指します。そのため、多額の資金を銀行に預けている場合、1,000万円以上の預金額が返却されないリスクがあります。預金額が大きい人は、より大きな損失をこうむる可能性があるのです。

そこで、1,000万円を超える資金で個人向け国債を購入することで、資産運用しつつ安全に資産を保有できるメリットがあります。

実質元本保証

「債券投資は安全資産」というイメージが強いですが、債券が安全か否かは発行体によって安全性は大きく異なります。極端な話、財政状況がギリギリの企業が発行している債券は、デフォルト(債務不履行)を起こす可能性が高く、安全な資産とは言いがたいのです。

一方、個人向け国債の発行体は「一国家」です。国が元本と利子の支払いを保証しているため、債券投資のなかでも最も安全性が高いと言えます。国がデフォルトを起こす可能性は限りなく低く、実質「元本保証」と言っても良いと思われます。

個人向け国債のデメリット

中途解約は要注意

個人向け国債を償還前に中途解約した場合、「中途解約調整額」と呼ばれる手数料が発生します。具体的な金額としては「直近2回分の各利子額面×0.79685」の金額が必要になります。そのため、中途解約すると利益が目減りしてしまうので注意が必要です。

また、個人向け国債はいつでも解約できるわけではありません。原則、債券発行から1年以上経過しないと解約ができないので、先立った予定のある資金を投資することは避けましょう。なお例外として、購入者が死亡した場合や被災による被害を受けた場合などは、1年未満でも解約が可能な場合があります。

金利変動リスク

「変動金利10年タイプ」の章でもお伝えしましたが、個人向け国債は実勢金利の上下に伴って、その適用金利も増減する特徴があります。そのため、当初予定していたよりも適用金利が下がり、思っていたほどのクーポンを得られない可能性もあります。

また、固定金利タイプを選択しても、償還前に市場で売却する場合は実勢金利の影響を受けてしまいます。安全資産と言われる個人向け国債でも、その価格は常に上下していることは肝に銘じてください。

まとめ

今回の記事では、債券投資の一つである「個人向け国債」についてお伝えしました。

個人投資家に向けて発行されている個人向け国債は、別の言い方をすれば「国が個人から資金を借りる」ことに他なりません。お金を貸すかわりに、「定期的にクーポンを受け取りながら、元本が返却されるのを待つ」ことが基本になります。

国債の発行体は国であるため、数ある債券投資のなかでも最も安全な投資先です。ポートフォリオに組み込んでリスクヘッジをするには、ピッタリの金融商品と言えるでしょう。

個人向け国債には3種類のタイプがあり、それぞれ償還されるまでの期間と金利タイプが異なります。自分の投資戦略やライフプランを考えてから、適したプランを選択することをおすすめします。

信用リスクが低く、実質元本保証とも言える個人向け国債を保有すれば、確実にみなさんの資産運用のリスクも低下します。特徴を正しく理解して、上手に個人向け国債を活用しましょう。