株式投資の銘柄選択法。テクニカル分析とファンダメンタル分析について

2021年7月28日

株式投資で利益を上げたい気持ちは、投資家なら誰もが持っています。そして、利益を上げるために最も大切なことは「どの銘柄を買うか」ではないでしょうか。

読者のみなさんも、今後上昇する銘柄をピタリと当てたいと思っていることでしょうが、そのためには株価の値動きを予想する技術が必須です。今回ご紹介する「テクニカル分析」と「ファンダメンタル分析」は、いずれも株価や相場の動きを予想する手法になります。

両手法とも、「利益を上げる」ことを共通の目的にしていますが、その手段は全くの別物です。また、短期投資に向いているのか、長期投資に向いているのか、などの違いもあります。株式投資の銘柄選びにお悩みの方は、ぜひ本記事を参考にして、自分好みの分析法を探してみてください。

株式投資は銘柄を選ぶことから始まります。投資のスタート時点からつまずかないように、ぜひ最後までお付き合いください。

テクニカル分析について

まずは「テクニカル分析」について見ていきましょう。

テクニカル分析の概要

テクニカル分析は、今後の株価の推移や相場の値動きを、過去の株価チャートから分析する手法です。具体的には、過去の株価チャートを分析することで、トレンドの推移や値動きのパターンなどを把握します。そして、「前回はこのパターンの後に値上がりしたから、今回は買い付けておこう」「1年前と同じように推移している。以前は急落したパターンだから、早めに売り注文だ!」などのように、今後の株価動向を推測して行動に移すのです。

テクニカル分析の根本的な考え方は、「株価チャートは投資家が行動して形成されるもの。だから、過去と同じようなパターンであれば、今回も同じように推移する可能性が高い」というものです。分析した結果を実際の行動に落とし込むことで、早期に収益が変化する特徴があります。長期投資の戦略を練るというよりも、デイトレードなどの短期投資に向いた手法と言えます。

テクニカル分析の特徴

分析情報はチャートだけでよい

通常の投資といえば、経済新聞を隅から隅まで読み込んで、臨時ニュースにも気を配り、企業の決算内容に目を通すなどをイメージする方も多いのでしょうか。なにが要因になって株価が変化するか分からないため、さまざまな情報を注視しなければいけない、という考え方のもとの行動とも言えます。

一方、テクニカル分析の場合、注視するのは株価チャートだけです。株価チャートに全ての投資情報が詰め込まれている、という考え方のもとに取引を行います。そのため、株価チャート以外の情報に気を配る必要がなく、非常にシンプルな投資手法と言えるでしょう。収集したい情報が増えるほど、手間も時間も資金も必要になります。株価チャートだけで全てが完結するテクニカル分析は、かなり手軽な銘柄選定を可能にするのです。

投資・経済知識を必ずしも要さない

お伝えしたように、テクニカル分析で必要な技術はチャートを分析することだけです。チャートを分析して相場の予測が立てば、あとは実際に取引をするだけなので、極論、投資のことを全く知らなくても投資が可能になります。

加えて、後述するファンダメンタル分析で必要な情報を収集する場合、個人投資家はかなり不利です。銀行や大手投資会社などの機関投資家の場合、チームとして企業の業績を分析し、世界経済の動向を伺っています。個人投資家とは比べ物にならない規模の情報収集能力のため、個人投資家が機関投資家を出し抜いて、利益を上げるのは難しいと言わざるをえません。

一方、テクニカル分析において詳細な金融情報は不要です。株価とチャート情報を頼りに投資を行うため、機関投資家との情報格差を気にする必要はほぼないのです。

また、テクニカル分析を初めて初期の頃は金融知識がなくても、テクニカル分析を続けることで着実に知識は身につきます。なぜなら、テクニカル分析で予測した株価と、実際の結果を照らし合わせることで、分析力の向上だけでなく、経済ニュースとの関連も理解できるようになるからです。統計的・数学的な株価予想に加えて、実体経済の分析もできれば、相場の推測精度も格段に上がること請け合いです。

便利な取引ツールで視覚的に分析できる

株価チャートの分析には、通常、証券会社が無料で提供してくれる取引ツールを使用することが多いでしょう。最近の取引ツールは非常に便利で、ただチャートを眺めるだけでなく、補助線を引くことや、移動平均線の推移を株価チャートと並行して視認することができます。

視覚的な情報だけをもとに投資をする手法は、テクニカル分析を除いて他にはありません。

テクニカル分析の注意点

過去に経験のない事例には対応できない

テクニカル分析は、過去のデータをもとに未来を予測する手法です。そのため、過去に経験したことのない出来事が起こった場合、対応は難しいと言わざるをえません。

株価というものは、世界の経済情勢や政治動向、企業の不祥事など、さまざまな要因に左右されます。きっかけは何であれ、平時の値動きとは全く異なる株価推移をたどる場合は、テクニカル分析で対応することは困難でしょう。

分析結果通りになるわけではない

こう言っては元も子もありませんが、テクニカル分析で導き出された結果の通りに、株価が推移する保証はありません。テクニカル分析は、あくまでも「過去」を分析しているにすぎず、相場を100%予測することなど誰にもできないのです。

ファンダメンタル分析について

続いて、ファンダメンタル分析について解説します。

ファンダメンタル分析の概要

「ファンダメンタル分析」は、企業の業績をもとにして株価の本質的価値を把握し、「実際の価値よりも値が安い銘柄を買う」手法になります。まずは、四季報や決算発表を注視することで、現在の企業の業績や財務を分析します。そして分析結果をもとに、「今後の成長性に期待できる企業」「企業の価値に比べて、現在の株価が安い銘柄」をピックアップし、買い注文をするのです。

「割安な銘柄を購入する」「成長性に期待できる」というキーワードから、「バリュー株投資」と「グロース株投資」を連想される方も多いと思いますが、まさにファンダメンタル分析は両投資スタイルの根幹になるものです。両投資スタイルとも、株価が成長するまでにはある程度の時間を要するため、短期投資よりも長期投資寄りの手法と言えます。

ファンダメンタル分析の特徴

大きなキャピタルゲインのチャンスがある

成長性の高い企業を早期の段階で発掘することで、比較的安価な株価で銘柄を購入できます。投資家の思惑通りに企業が成長してくれれば、それに伴って株価の値上がりも期待でき、売却することで大きなキャピタルゲインを獲得できるのです。

考えてみてください。今となっては世界的に有名な、AmazonやGoogleも、起業したての頃はただの一企業にすぎませんでした。もし、その時期に銘柄を購入できていれば、今頃は多額の利益を手にしていたことでしょう。このように、ファンダメンタル投資を駆使すれば、長期投資で大きなキャピタルゲインを上げられるのです。

売り買いの手間が少ない

先ほどもお伝えしたように、ファンダメンタル分析での投資は、基本的に長期投資を前提にしています。そのため、短期的な株価の動向に左右されることは少なく、仮に下落局面を迎えたとしても、上昇相場を待つことが可能です。そのぶん、売り買いの手間や手数料は少なくて済むので、本業が忙しい個人投資家に適した投資手法とも言えるでしょう。

短期的なトレンドを気にしなくてよいことは、必要とされる判断数も少なく、下落にも耐性があることから、精神衛生的にもメリットになると思います。

ファンダメンタル分析の注意点

テクニカル分析の章でもお伝えしましたが、ファンダメンタル分析に必要な情報量は膨大なものがあります。そのため、個人投資家が機関投資家よりも質の高い情報を迅速に入手することは不可能と言えるでしょう。それほどに、機関投資家の情報収集力は高いものがあるのです。

「みなさんが情報を仕入れた頃には、機関投資家がとっくに大量買い付けをした後だった」というケースも少なくないと思います。

まとめ

今回の記事では、テクニカル分析とファンダメンタル分析について、概要やメリット、デメリットをお伝えしました。

両者ともに、株式投資で利益を上げることを目標にしていますが、その手法が全くの別物であることを理解いただけたと思います。それぞれの投資手法に必要な知識や情報内容には大きな差があります。「二兎を追う者は一兎をも得ず」ということわざの通り、初心者の方が両方の手法をいっぺんに学ぶことは難しいと思います。また、自分がしたい投資が短期投資なのか、長期投資なのかによっても選択は変わってきます。今回の記事を参考に、ご自身にマッチしそうな手法から始めてみてはどうでしょうか。