自動車保険の無駄を無くす方法【特約編】
車を所有している人のうち、大多数が自動車保険の補償内容の見直しや、節約について一度は検討されたことがあると思います。
しかし、補償内容や等級制度、割引制度が非常に複雑であるがゆえに、基本的な自動車保険の内容は理解していても、細かな特約の補償内容まではよく理解されていない方が多いのではないでしょうか。
自動車保険において無駄が発生する原因としては、適切な割引を適用していないこと、自分のライフスタイルでは発生しない損害まで余計に補償していることなどが考えられますが、特約の補償内容が重複しているというケースは、ご自身でネット型保険に加入している場合は見落とす可能性が高いことはもちろん、保険プランを設計して提案するディーラーや保険代理店でも気が付かないことが多くあります。
そこで今回は、ディーラーや保険代理店でも見落としがちな、無駄な補償を無くすための確認項目を解説していきます。
特約の補償内容も簡単に解説しますので、重複を確認するだけでなく、補償内容の理解を深めて必要性についても再検討してみてください。
特約と言っても年間数百円のものから数千円のものまで様々ですが、見直す機会を損ねると、何年も無駄に保険料を払い続けるだけでなく、いざという時に特約の存在に気付かず損をする事になるかもしれません。
保険証券を片手にお読みいただくだけで、無駄が簡単にわかる内容になっていますので、是非最後までご覧ください。
重複補償を確認しよう
まず、前段で説明した、特約の補償内容が重複しているとは、どのようなことでしょうか。
順を追って解説していきます。
重複補償とは
重複補償とは、他の保険契約と補償の内容が重複しており、まさに、無駄に保険料を支払っている状態のことを指します。
ディーラーや保険代理店でも重複補償を見落としがちな理由
保険を販売する資格を持つ人の事を募集人と呼びますが、通常、ディーラーや保険代理店の募集人は、法律上、お客様の意向を把握した上で適切な保険内容を提案する義務があることから、募集人としての知識や経験が乏しいなどの場合を除き、お客様にとって無駄な補償を提案することはないと考えて良いでしょう。
しかし、重複補償は同一家族内で複数の保険契約が存在する場合に発生します。
例えば、同じ家に住む親と子がそれぞれ違う代理店から保険加入していた場合、それぞれの募集人はお互いの契約を書面で確認することをしない限り、もしくはお客様が自ら、「父の保険にその特約があるので、私の保険には必要ありません」と申告しない限り、募集人は補償の重複に気づかないでしょう。
また、ものによっては、自動車保険の特約の補償内容が火災保険や傷害保険の補償内容と重複するものもあります。
全ての保険を一人の募集人が管理し、補償の重複がないか、丁寧に確認していれば問題ありませんが、自動車保険はディーラーやネット型で加入し、火災保険は別の代理店で加入している等、保険種類によって管理する募集人が異なる場合は、特約の重複を見落としやすいでしょう。
重複補償の場合の保険金の支払われ方
ここまでで、「補償が重複していたとしても、事故に遭った時にはどちらの契約からも保険金が支払われて得をするので、重複補償があっても良いのではないか?」と考えられた方もいらっしゃるかと思います。
しかし、残念ながら、同じ事故で保険金が重ねて支払われることはありません。
つまり、重複保険があるということは、完全に無駄な保険料を支払っていると言えます。
ここまでで、重複補償をご自身で確認することの大切さをご理解いただけたかと思います。
重複補償が発生しやすい特約
それでは、本題となりますが、自動車保険において、補償の重複が発生しやすい特約をご紹介します。
人身傷害車外事故特約
この特約は、歩行中や自転車運転中など、契約している車の外での自動車事故により、自分や家族がケガを負った時にケガの治療費等を補償するものです。
この特約は同じ家に住んでいる1家族で複数の自動車保険を契約している場合、いずれか1台に付帯していれば良い特約となりますので、複数の自動車保険にこの特約が付帯されていないか、ご確認ください。
個人賠償責任特約
この特約は、自動車事故以外のケースで、自分や家族が他人の物を破損させたり、ケガをさせたりしてしまった際に相手への賠償金を補償するものです。
もちろん、喧嘩や犯罪など、故意的な事故については補償しませんが、うっかり自転車で他人に接触してケガをさせてしまったケースや、犬の散歩中に犬が他人を噛んでケガをさせたケース、さらには子供が友達の家へ遊びに行った際にテレビを壊してしまったケースなどで相手への賠償金が補償されます。
この特約が付帯されているのに、このような事故で補償されると知らず、保険金請求をしなかったということはありませんか?
この特約は、同じ家に住んでいる1家族で複数の自動車保険を契約している場合、いずれか1台に付帯していれば良い特約となります。
さらに、複数の自動車を所有していない方も注意が必要です。
この特約は自動車保険以外にも、火災保険や傷害保険の特約としても販売されており、最も重複が発生しやすい特約です。
火災保険や傷害保険との重複もご確認ください。
また、近年は自転車の保険を義務化する自治体が増えています。
自転車運転中の事故における相手に対する賠償金に関してはこの特約で補償されますので、自転車保険と重複補償がないかも確認が必要です。
弁護士費用特約
この特約は、保険会社によって「日常生活・自動車事故型」と「自動車事故限定型」の2種類存在することがありますが、「日常生活・自動車事故型」は後発商品であり、あまり普及していないものなので、ここでは「自動車事故限定型」について取り上げて解説します。
この特約は、自動車事故が発生した際、自分の過失がないことを主張する場合に役に立つものです。
さらに詳しく説明すると、通常、自動車事故では保険会社が当事者に代わって相手方との示談交渉を行うことが許されています。
しかし、自分に非がないと主張したい場合、弁護士法の定めにより保険会社に支払いが発生する可能性がないとされ、示談交渉を代行する事が非弁行為として違法となるため、保険会社は相手方との示談交渉を代行することが出来ません。
つまり、ご自身で相手や相手保険会社と交渉し、自分の車の修理費用やケガの治療費等を請求する必要があります。
相手が快く支払いに応じれば問題ありませんが、示談交渉が難航するケースも多くあります。
例えば、走行中の自動車同士の接触事故となりますと、多くの場合、どれ程相手が悪いと主張したとしても、相手からは「1割か2割程度はあなたに非があるだろう」と主張され、解決に至るまで1年以上かかることもあります。
このような場合に頼りになるのが、この弁護士費用特約です。
この特約の付帯がある場合は、自分に非がないと主張したい場合でも、相手との交渉を弁護士に委任し、その費用を保険で補償してくれるものです。
この特約も、同じ家に住んでいる1家族で複数の自動車保険に加入している場合、いずれか1つの契約にこの特約を付帯することで、全ての自動車について補償が効きますので、補償が重複していないか、ご確認ください。
法人の契約では1台ずつに付帯が必要な特約であり、ディーラーや保険代理店の募集人が誤って個人の契約でも全車両に付帯している可能性も考えられます。
ファミリーバイク特約
この特約は、原付バイクの任意保険を、自動車保険の特約で補償するというものです。
この特約は、1つの自動車保険にのみ付帯されていれば足りるもので、同じ家に住んでいる1家族で複数の原付バイクを所有している場合や、複数の車を所有している場合でも、所有する全ての原付バイクでの事故を、1つの自動車保険契約に特約を付帯することで補償の対象とすることができます。
この特約の存在を知らずに、車とは別にバイクの任意保険に加入し、高額な保険料を支払っている方も多いのではないでしょうか。
まとめ
今回は、自動車保険の特約に生じる重複補償について特約の簡単な説明と併せて解説してきました。
重複補償は完全に無駄な支出にも関わらず、多くの人が気付かずに何十年も無駄な保険料を支払い続けています。
ディーラーや保険代理店の募集人にお任せしている方や、自分は大丈夫!とお考えの方も、改めて確認してみると、案外無駄が見つかることがあります。
・人身傷害車外事故特約
・個人賠償責任特約
・弁護士費用特約
・ファミリーバイク特約
無駄金を支払い続けることのないよう、是非一度、この4つの特約の重複を確認してみてください。